作家着物とは?

作家着物とは、着物に関する造詣が深く、技巧に優れた作家によって作られた着物です。

「染め」や「織り」の巧みな技を用いて一つ一つ作られた作家着物は、作家の個性が表れた繊細で美しい着物ばかりで、人間国宝の着物となれば破格の値段がつくこともあります。

また、作家着物の種類は友禅や刺繍着物をはじめ、数えられないほど豊富です。

着物作家も有名な方から駆け出しの方まで様々いるので、作家着物すべてが高価ではありません。

現代の作家着物に限っていえば、日本の伝統技術を継承しつつも時代に沿った感覚が取り入れられており、アンティーク着物と比べて現代になじみやすい仕上がりになっています。

TPO・着用シーン着物の種類によります
有名な着物作家伊達弥助、羽田登喜男、柿本市郎、喜多川平朗、久保耕、久保田一竹、京屋林蔵、玉那覇有公、古賀フミ、斎藤三才、山田貢、志村ふくみ、宗廣力山、小宮康孝、松井青々、上野為二、城間栄順、森口華弘、青木滋芳、川島甚兵衛、中村勝馬、中村勇二郎、辻村壽三郎、田島比呂子、平良敏子、北出与三郎、北村武資、木村雨山、由水十久、与那嶺貞、龍村平藏、六谷梅軒、和田光正 など

作家着物が高級品である理由

作家着物は量産される着物と違って、特殊な技法を駆使して長い年月をかけて生み出されるので、その価値や人気とともに高くなる傾向があります。

さらに、作家のサインとして落款(らっかん)や刺繍、本物の証として証紙がついている場合があり、これらの「作家が仕立てた着物の証」があると高価に扱われます。

国や世間に認められている着物作家は特に高額です。

例えば、加賀友禅を代表する作家・初代由水十久の訪問着は、新品で定価500万円以上の値段がつきます。

有名な着物作家はどんな人?

全国に数百人いるとされている着物作家は、国に認定された重要無形文化財の保持者「人間国宝」の作家から無名作家まで存在します。

上の表で紹介した作家の中から、「これだけは抑えておきたい有名作家」をピックアップしました。

北出与三郎(きたで よさぶろう)

初代 北出与三郎は、皇室へ献上する着物や帯の数々も手掛けてきた着物作家です。

神事に使われる榊の葉を使った上品で幻想的な色合いを生み出し、京友禅で創り出される特有の表現法は「北出カラー」と呼ばれて高く評価されています。

オリジナルの本袋帯は京都の西陣織りで希少価値が高く、体に沿って形状が変化します。

羽田登喜男(はた ときお)

羽田登喜男も友禅染において代表的な手描き友禅作家です。

加賀友禅と京友禅を融合させ独自の技法・世界観を確立し、自然の移ろいや花鳥風月を描いた作品を数多く製作しています。

中でも、おしどりを描いた作品は有名です。

人間国宝に認定され、京都府・市などによってイギリス皇室ダイアナ妃に贈られた振袖を手掛けるなど、国内外問わず活躍した作家です。

志村ふくみ(しむら ふくみ)

志村ふくみは、草木染めの絹の紬糸を使った紬織を手掛ける有名な染織作家です。

紅花や藍、カラスノエンドウ、ヨモギといったさまざまな植物染料で作られた作品は、色彩豊かで独創的な美しさを持っています。

紬織りの重要無形文化財保持者・人間国宝に認定され、文化勲章も受賞しています。

由水十久(ゆう すいとく)

昭和の加賀友禅を代表する作家として知られる「初代 由水十久」は、加賀友禅協会が認める巨匠の一人です。

加賀友禅は写実的な自然のモチーフが多い中、人物画を好んでおり、日本の歴史と文化を唐子(からこ)と呼ばれる童子(どうじ)に見立てた模様を描いています。

また特別な意匠は、弟子に500回もポーズを取らせて下絵をこしらえるほどの執念さを発揮したという、驚きのエピソードも。

与那嶺貞(よなみね さだ)

与那嶺貞は沖縄県出身の染織家で、90才で重要無形文化財「読谷山花織(よみたんざんはなおり)」の技術保持者(人間国宝)に認定されました。

戦争によってわずかに残った布を頼りに、沖縄の産業であった読谷山花織の復興に命を捧げた功労者です。

読谷山花織は、銭に似せた模様で裕福を願う銭花(せんか)、風車、7種の草花を束ねて扇の形に作る扇花(ひおうぎ)をベースに約30種類の模様があり、織物ごとに違う模様は遊び心があります。

細見華岳(ほそみ かがく)

綴織りの技術で人間国宝に認定されている細見華岳は、綴織りの重鎮と呼ばれるほどの着物作家です。

作品は「爪掻き綴織り」というノコギリ歯のようにギザギザに刻んだ爪先で、糸を一本ずつ?き寄せるようにして模様を織っていく技法で作っています。

帯一枚に散りばめた細やかな模様や、シンプルに一つの模様を中央に置いた作品など、抽象画を彷彿させる作品も多いです。

作家着物についている「落款(らっかん)」ってなに?

斎藤三才の落款

多くの有名作家の作品には、刺繍もしくは織り込まれる形で「落款(らっかん)」が入っています。

「落款」は落成款識(らくせいかんしき)を略で、着物に刻印されている「作家が仕立てた着物の証となる印」です。

作家が自分の作品に落款を押す行為は、鎌倉時代から確認されています。

着物の場合は、前身頃に縫いつける15cm程の半幅の布である「おくみ」か、「衿先」にある落款によって作家名がわかります。

着物が似たようなデザインであっても、落款を見れば価値や作られた時代がわかります。

また、初代から二代目へと技術や作風を継承している着物作家も落款で見分けがつきます。

作家による七五三の着物について

子供のこれまでの成長を祝い、健やかな成長を願う七五三。

着物作家の中には七五三の着物を手掛ける作家もいて、手描き加賀友禅など本格的な作品を子供のために購入できます。

反物着物なら年齢とともに変わる体型に合わせて仕立てられ、大人になっても着られるのでおすすめ。

また最近は、フォトスタジオで七五三の写真を撮る方が増えていることから、作家着物を取り扱うフォトスタジオも増えています。

レトロとモダンが融合したお洒落な作品など、着物作家の一点ものの衣装は、一般に出回っている作家着物と負けず劣らずとても人気があります。

お気に入りの作家着物を見つけて、親子でおそろいの作家着物を着られるなんてワクワクしますね。

特に初代、二代目と引き継がれている作家着物を選べば、趣向が凝らされた一生の思い出になるでしょう。