袷着物ってどんな着物?

袷着物は、10月から翌年の5月までの、比較的暖かい時期以外に着られる着物です。胴裏(どううら)と八掛(裾回し)と呼ばれる裏地がついています。
胴の部分に胴裏があることで、保温効果があり、寒い時期でも快適に過ごせます。また滑りにくい生地を使用しているので、着物の着崩れを防ぐことができます。八掛は、裾の裏や袖口についており、着物の表地の保護や、歩きやすくする役割があります。
正絹着物とは?
袷着物の素材には、絹・木綿・ウール・麻・ポリエステルなどがあります。中でも絹は古くから着物の素材として使用されていたこともあり、紬や小紋のような普段着として着られる着物や、着物の中に着る長襦袢だけでなく、訪問着や振袖などの格の高い着物、さらに帯にも使用されています。
正絹(しょうけん)着物とは、絹100%の素材の着物のことで、袷着物の中でも、特に高級な着物として重宝されています。次で正絹着物の長所と短所を見ていきましょう。
正絹着物の長所
正絹着物の短所
正絹の袷着物を着た後のお手入れ方法は?
次に、正絹着物の特徴を踏まえたうえで、着用後のお手入れ方法についてみていきましょう。
手順①:晴天の日に風通しの良い場所で干す

着用後の着物は、脱いだ状態で長時間放置すると、体温や湿気でカビの発生や、汚れによる劣化につながりやすいです。脱いだ後は、必ず着物を干してからしまいましょう。
着物は晴れた日に、湿度40%、室温20℃~23℃くらいの、通気性の良い場所に、和装用ハンガーにかけて干すのがおすすめです。また着物の生地は、直射日光の当たると日焼けして傷んでしまうので、干す場所は日の当たりにくい場所にしましょう。
正午を挟んだ、午前10時から午後3時の、4時間程度干しておくのがベストですが、忙しい時は最低2時間は干して乾燥させます。
手順②:汚れをチェック

着物を干して湿気を取り除いたら、和装用ハンガーにかけた状態で、着物についたホコリやゴミを取り除きましょう。
ホコリの落とし方
汚れをチェックする箇所

シミの落とし方
正絹着物の汚れやシミは、基本的に着物専門店に落としてもらうのが安心ですが、衿や袖口のあまり目立たない汚れであれば、以下の落とし方を参考にしてみてください。
汚れの落とし方
1.着物の下に木綿の布かタオルを敷きます
2.木綿の布かタオルにベンジン(またはリグロイン)をつけて、軽く叩くように下のタオルに汚れを落とします
3.汚れを落としたら、自然乾燥させましょう
手順③:シワが目立つ箇所にアイロンをかける

着物の汚れを落としたらシワをのばします。着物の生地が変色してしまう恐れがあるので、アイロンの使用には細心の注意を払いましょう。小さいシワなら陰干しや、畳んでしまうことで自然に伸びることもあるので、陰干ししても取れなさそうな、目立つシワがある場合のみアイロンを使用しましょう。
シワの伸ばし方
1.シワがあるところをアイロン台に置きます
2.あて布に霧を吹きます
3.霧を吹いたあて布をシワの上にあてて、アイロンをかけます
4.熱を完全に取ります
正絹着物はどうやって保管する?
着物の湿気を取ってシワを取ったら、丁寧に畳んで保管します。次に保管の流れを詳しくお伝えします。
手順①:着物をたたむ

着物をしまう時には、袖の中にものが入っていないか確認してから、折り目に沿って長方形になるようにたたみます。刺繍や箔が施されている部分は、白布や和紙を間に挟んで保管すると、変色や箔落ちを防ぐことができます。
手順②:着物をたとう紙で包む

正絹着物は湿気を吸収しやすく、カビが発生しやすいので、たとう紙に包んで収納しましょう。値段は1枚100円くらいのものから2,000円ほどのものまであり、高価なものほど吸湿性が高いものが多いです。
たとう紙に着物の写真や名前シールなどを貼っておくと、中身を確認する手間が省けるのでおすすめです。たとう紙は約2~3年で新しいものに交換して、着物を綺麗な状態に保ちましょう。
手順③:適切な保管場所で収納する

正絹着物の保管場所は吸湿性が高く、虫がよりにくい桐ダンスが最適とされることが多いです。風通しがあまり良くない、スチール製・プラスチックの収納ケースは、風通しが良くなく、カビが発生しやすいので、なるべく避けましょう。
スチール製のものを使用する場合は、直射日光が当たらないようケースに入れるなど工夫が必要です。またプラスチックの収納ケースを代用する場合は、除湿シートをケースの中に敷くなどの対策が欠かせません。
タンスにしまうときに気を付けることは?
ポイント①:上段の引き出しに大切な着物を収納する
タンスは下段に湿気が溜まりやすいので、大切な着物や高価な着物は、上段に入れると安心です。また、引き出しの底に白木綿を敷き詰めて、互い違いに着物をしまうことで、型崩れや汚れ防止につなげることができます。
ポイント②:着物は無理に重ねすぎない
着物は何枚も重ねると湿気がこもりやすくなるだけでなく、型崩れしてしまうこともあるので、重ねるのは4枚程度までにしましょう。
ポイント③:着物と帯は同じ場所に入れない
大きさが異なるものを一緒に収納すると、型崩れやシワにつながることがあるので、着物と帯はそれぞれ別の場所にしまいましょう。
ポイント④:防虫剤などの薬剤は1種類のみを使う
正絹着物を湿気や虫食いから守るために、除湿剤や防虫剤は欠かせません。防虫剤や除湿剤は複数のものを使用すると、化学反応が起きて、着物が変色してしまうことがあります。そのため、1つの引き出しに1種類だけを使いましょう。
防虫剤は、引き出しの4隅の着物に直接触れない場所に入れます。使用する薬剤の交換時期をチェックして、近くなったら同じ種類の新しいものに交換しましょう。
手順④:定期的に虫干しする

正絹着物は、着物を良い状態で保つために、必ず虫干しするようにしましょう。定期的に虫干しすると、着物の湿気を取り除き、カビや汚れを防ぐだけでなく、虫食いなどから着物を守ることができます。
なかには虫干しを代行してもらえる着物専門店などもありますが、虫干しは着物初心者の方でも気軽にできるので、なるべくご自身で行うことをおすすめします。
虫干しの適切な時期
虫干しは、年に3回行いましょう。特に梅雨の湿気を取り除くために最適な7月~8月や、空気が乾燥しやすい10月~11月、1年で最も湿度が低いとされる1月~2月に虫干しするのが一般的です。
虫干しする際の注意すべきことは?
虫干しは、午前10時から午後3時までの気温が高くなる時間帯に、4時間程度干すことをおすすめします。また、虫干しする日は、なるべく前後2日が晴れ予報の日を選びましょう。タンスの湿気を全て取り除くために、1日で全ての着物の虫干しを行うのが理想です。
複数回に分けて行う場合は、虫干しした着物に湿気がうつってしまわないように、他の引き出しを開けておくなど、少しでも湿気を取り除く工夫が必要です。
虫干しの仕方
1.着物を和装用ハンガーに1枚ずつかけます
2.着物に直射日光が当たらない、風通しの良い部屋で陰干しします
3.着物を包んでいたたとう紙を同じ部屋に干します
4.着物をしまっていたタンスやケースを掃除機やふきんで綺麗にします
5.干し終わったら、着物についているホコリなどのゴミを、着物専用のブラシなどを使用してやさしく取り除きます
6.着物にカビや虫食い穴などがないかをチェックします
7.着物に問題がなければ、着物をたたみ、たとう紙に入れて収納します
8.防虫剤や除湿剤の期限が過ぎている場合は、新しいものに交換してタンスに入れます
おわりに
いかがでしたか?袷着物の中でも特に高級で、デリケートな素材の正絹着物。適切なお手入れの仕方や保管方法を知っておくことで、大切な着物を少しでも長く綺麗な状態に保つことができます。ぜひ美しい着物を長く着続けるために、実践にしてみてくださいね。