KIMONO PROJECTって?

「KIMONO PROJECT」は、「世界はきっと、ひとつになれる」というメッセージとともに、日本のすばらしい伝統である「和」を重んじる精神を世界に発信するプロジェクトです。
2020年の東京オリンピック、パラリンピックに向け、世界213の国と地域をテーマにした着物の作成を目標としています。
これらの着物には、各国の歴史や特徴をとらえたものがモチーフとして描かれており、世界に一つだけのデザインとなっています。
また、日本全国の職人さんが制作するため、多種多様な技法が用いられており各国の特徴を巧みに表現しています。 いまや人間国宝級の作家さんや国内の着物・帯メーカーが参画するほどの大規模なプロジェクトです。
1着の着物の作成には200万円ほどかかり、総額にして約4億円だそうです。これらの資金はすべて個人や企業からの寄付によるものというのですから驚きです。
既にミラノ万博に参加したり、G7エネルギー相会合では見学会に採用されたりと様々な場で活用されています。
KIMONOプロジェクトについてインタビュー

このプロジェクトのリーダーである高倉慶応さんは、銀行員を経て久留米市の老舗呉服店「蝶屋」を継いだ3代目です。
今回は、KIMONOプロジェクトについて詳しく聞かせていただきました!
KIMONOプロジェクト開始!
ーーKIMONOプロジェクトはどのような思いで始められましたか? きっかけを教えてください。一番大きな理由は2020年に東京オリンピック2020が決定したことです。 一生に一度しかないオリンピックに文化の面で何か貢献したい。それが一番のきっかけです。
また、何十年にもわたり斜陽してきた着物業界にもう一度元気を取り戻してほしい。 自分たちの大切な文化である着物が日本人になかなかその良さを理解してもらえないことへのジレンマに対し、新しいアプローチを試みることで多くの日本人に再度興味を持ってほしい。
この二つが大きなきっかけです。
ーー「IMAGIN ONE WORLD 世界はきっと、ひとつになれる」という理念の背景を教えてください。この理念の背景にあるのは、ジョン・レノンの「イマジン」という曲の歌詞です。 曲に込めた平和と共存の想いに、世界はひとつしかないという思いを加えてイマジン・ワンワールドと名付けました。
国と国とでは解決が難しい問題も、文化レベルで、また、市民レベルでは乗り越えられると思います。
ーーなぜ、各国のモチーフを入れた着物を作ろうと思ったのでしょうか?参加される国の皆さんへの最高のおもてなしとは何か? その時に頭に浮かんだのが皇室の方々が訪問される国やお見えになる相手の国の文化や花や色を自らの服装に取り入れられる姿勢でした。
それを模範として全ての国のそれぞれの文化を私たちのKIMONOに取り入れてお迎えしよう、という考えに行きつきました。
ーープロジェクトを立ち上げる際に困難だったことはございますか?また、当時の周囲の反応はいかがでしたか?一番困難だったことは、私たち自身になんの後ろ盾もなく、活動を通して少しずつ知名度を上げていくしかなかったこと。
また、制作資金を4億円集めるというチャレンジはプロジェクトへの信頼と認知がないと進みません。地道な活動とSNSを使った発信で少しずつ活動の実績を重ねつつ周囲からの信頼を得ていくところが本当に大変でした。
また、理念には賛同されても「どうせ無理だろ」と、周囲の反応の中でも特に業界内からは冷ややかな反応で、「なんのメリットがあるのか?」などビジネス的な発想の人からは全く協力が得られませんでした。
一方、純粋に理念に賛同し協力を申し出てくださるかたもいらっしゃいました。そのような仲間には救われました。
いざ着物制作
ーーどのような着物作家さんに依頼されたのでしょうか?また、どのように説得されましたか?私の本業を通じてこれまでに信頼関係のあった一流の制作者にまずは依頼をすることから始めました。これまでの信頼関係から当初はスムーズにご理解を頂けました。
その後、活動を耳にして全国の産地の組合、作者ご自身や作者を応援されている方々から参画希望の問い合わせが続きました。
その際にはそれぞれと一人ひとり現地まで訪ねてお会いし、事業の理念をご説明して「誇りと名誉ある仕事なので引き受けてほしい」と説得しました。
こだわったことは「オールジャパン」による制作です。 ですから、所属や年齢、経験の有無を問わす、やる気と腕前のいい職人さんには門戸を開き普段つくられている作品やお会いして感じたお人柄によって制作を依頼してきました。
結果として、制作された作者からのご紹介がとても多かったように思います。 それは、制作して楽しく有意義だったという作者の感想から起こったことでありとても嬉しく思います。
ーー着物に描くデザインはどのように決めているのですか?その際に困難に感じたことはございますか?KIMONOのデザインについては、作者、大使館(その国の方)そして私の三者で話をして決めていきます。作品は作者のものであり作風は大切にしなければなりません。
また、相手の国の方に喜んで頂けなければ制作する意味がありません。 ですから、大使館からのチェックを大切にしながら、多くのヒントを頂きました。
そのなかで困難だったことは、こちらが思うイメージと相手の国の人が自分をイメージする文化的な齟齬です。また宗教的なモチーフや神聖なものへの感覚が国によってさまざまに違うために、モチーフや色の選定や、デザインする場所の選定などには随分苦労しました。
一部の着物完成、お披露目
ーー印象に残っている着物やそれにまつわるエピソードがございましたら教えてください。それぞれの国に思い入れがありますが、中国の着物はデザインに大変気を遣い苦労しました。 大使館の文化担当官とお話をしてモチーフは見つかったものの、それをどのように実際のデザインにするのかはアイデアが固まるまでに時間を要しました。
万里の長城と竜と大河をひとつの大きな流れるようにデザインするアイデアが作者に浮かび「これだ」となってその周りを様々なモチーフで飾りました。
作品が完成したとき、その情報が中国国内のネットの中で広がりとても緊張しました。 それは、一般的にネットの中では日本への厳しい意見が多いことを感じていたからです。
ところが、心配をよそにもの凄い勢いで中国国内に拡散した中でほとんどの意見がポジティブな意見ばかりでした。
「今の中国人よりも日本人は中国を理解している」このようなご意見にはホッと胸を撫でおろしました。幸運かつ光栄なことに中国大使館にて大使にもご覧いただける機会がありましたが、大使からもご好評いただきました。
その時に、任期を終えられる寸前の文化担当参事官さんより「文化の世界には国境はありません」「世界中どこのものでも良いものは良いですよね」そういって堅い握手をされたことは一生の思い出です。
ーー着物のオリンピックとも表現される着物プロジェクトですが、参画した作家さんの反応はいかがでしたか?作者の皆さんに共通して言える反応は、やりがいがあった、です。 同じ経済条件で制作することもいい意味で功を奏し、作品どうしが競い合う効果ももたらしてくれました。
また、ベテランの先生方にとっては「人生最後の大作」という意識も多く見られました。若い先生方からすると「登竜門」の様な意識も感じました。
また、多くの他の作者の作品を見ることにより視野が広がったという意見も多くいただきました。普段できない新しいこと、これまでやりたくてもできなかったことに挑戦することで、いい意味で作風に変化もみられました。 そして、それぞれの産地が活性化され、制作意欲が増したことが一番うれしく思います。
KIMONOプロジェクトのこれから…
ーー今後の目標と最終目標を教えてください。当面の目標は213に増えた国と地域の制作を完了することです。作者はほぼそろいましたので残すは資金面。あと18か国分の制作資金約4000万円を何とか集めたいと思います。 また、オリンピックでの採用も最後は世論の後押しでなんとか叶うことを心から期待しています。
ですが、私たちの究極の目標は、世界をひとつにすることです。
2020年以降にプロジェクトの活動が世界へと広がり、同じ志を持つ世界中の人と力を合わせて、お互いの文化を尊重しつつ調和のとれた社会を築いていけるようになるためにそのシンボルとして、私たちの作品が輝き続けることを究極の目標としたいと思います。
ーー着物の持つ力とは何だと思いますか?また、KIMONOプロジェクトを通して伝えたいことは何でしょうか?着物の持つ力は、一言で申し上げることは難しいですが、美意識と思想が込められる意匠であることではないでしょうか?
日本人が得意とする、比喩、隠喩をデザインに込めることによって、静かながらも熱い思いを美しさの中に込め、それが相手に伝わることだと思います。
また、着物と帯が生み出す相乗効果も和服ならではではないでしょうか? 日本の染や織の技術やセンスは世界のなかで冠たるものだと思います。 その技術とセンスで創り上げた着物には、作者の想いがこもっていて、その想いが相手に感動を与えてくれます。これこそ着物のチカラだと思います。
あとがき
このプロジェクトは世界各国の方へのおもてなしだけではなく、私たち日本人にとっても自国の文化を見つめなおす良い機会なのではないでしょうか。 すべての着物が完成する日が楽しみですね。
プロジェクトの今後に目が離せません。
一般社団法人イマジンワンワールド
ウェブサイト:https://piow.jp/
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